一昔前のIT系は働き方についていえばブラックの代名詞だったと思いますが、最近はそうでもなくなってきていますよね?
先代は設立当初から、ITは生活を効率化して人の人生を豊かにするものなのだから、そこで働いている人もITで効率化されて自分の時間を有意義に過ごしていないとウソでしょ、という考え方を持っていまして、効率よく働いてさっさと帰るという方針で会社を運営していました。
とはいえ、私自身は働くのが楽しくなってしまってダークサイドに堕ちていました(笑)
今のところ、当社では残業時間は少ないですし、比較的、良い働き方ができているのではないかと思っています。
私も先代も労務に詳しいわけではないので、就業規則は、かつて20世紀の終わりごろ社労士さんに作ってもらい、最低限のメンテナンスを施して今日に至ったモノが残されていました。いくつか労働基準監督署から指摘が入っていて、またもやメンテナンスしなければならなかったのですが、今回は胸を張って「ウチの会社の就業規則」と言えるものにするべく、私なりに勉強して全面改定してみました。
おりしも、世の中は働き方改革真っただ中なので、何か改革されようとしているのか、これを機にじっくり考えて書いてみました。先月完成して、社労士さんに依頼して、労働基準監督署に提出してもらいハンコをもらうことができました。
今回、以下のような点を変更しました。
(1)フレックスをなくした
いきなり多様な働き方への対応と逆行してるかのような変更ですが、育児や介護との両立といった働き方改革の趣旨からすると、フレックス制はそれほどプラスにはなっていないと思いました。
フレックスを採用しているIT企業では、夜遅くまで働いて朝の出勤が遅いという印象があります。周りに後ろにシフトしがちな勤務形態の人がいると、打ち合わせも遅くなりがちで、しばしば全体の時間が後ろに引っ張られます。普通の定時に出勤している人は、引っ張られて残業することになってしまいます。集中して仕事をしてなるべく早く帰ることを目標にしている当社にとっては、ネガティブ要素も多いと考えました。
育児や介護がある人にとって、フレックスは解決策ではなくて、時間を限定できるパート社員の制度のほう必要なのだと思います。
ネットで見た意見の中で、フレックスだと自分の仕事が終わったらすぐ帰れるけど、仕事がないのに定時まで時間をつぶしておくのが人生の無駄、といったものがありました。会社としても、仕事がないときには早く帰らせて、仕事が多いときはその分で残業させたほうが効率的という説明もありました。私はそういう意見には違和感を感じました。その発想は労働集約型前提なのだと思います。これからは会社も働く人も、単に「言われたことをやるだけ」「やらせるだけ」という関係から脱却して、しっかり考えて付加価値がつく仕事をしようとしていかないと、本当の意味での働き方改革にはならないのではないでしょうか。
(2)裁量労働制をなくした
当社もかつて何人かは裁量労働制にしていたことがありますが、もう長いこと運用していません。要件も厳しくなっていますし、今後も運用することはないだろうな、と思ってカットしました。
フレックスと裁量労働制は制度が複雑になりがちなので、この2つをカットすると、就業規則はかなりすっきりしたものになります。規則が複雑ということは運用も複雑なわけでして、管理部の仕事が増えてしまいます。業務のシンプル化のほうが、当社にとっては働き方改革になるだろうと考えました。
雇用側としてはいくつかのオプションが亡くなるわけですが、当社としては1日8時間×週5日=40時間というレギュレーションの中で、創意工夫しながら勝負していきたいと思います。
(3)パート社員のルールの整備
育児や介護、多様な働き方への対応は、これからの時代、どんどん必要になるのだと思います。そういうときになるべくデメリットなく正社員とパート社員の転換、再転換ができれば、働く意欲と技術をもっている方にやめてもらわなくても済みますので、このあたりはきっちり整理しました。同一労働同一賃金という流れもありますので、評価制度ともリンクさせて、月給型の正社員も時給型のパート社員も同じテーブルで給与を確定できるようにしました。
もともとパートで働いているエンジニアもいましたので、規則を運用に追いつかせて整備することができました。
(4)有給を使いやすく
1時間単位の有給も使えるようにしました。これは社員には大変好評で、導入以来、ばんばん有給申請が入ってくるようになりました。ただし、この制度は5日分40時間までしか1時間単位の有給にできないという労基法上の制限があります。なぜなのか私なりに考えてみました。有給がもっとも少ない人は10日。そして必ず使わないといけないのは5日分でそれはまる一日全く仕事をしないというカタチで使わないといけません。そうすると1時間単位にしてもいいのは5日分40時間ということになるので、こういう制限ができたのかな、と思っています。それで、まるまる消費しないといけない5日以外は、従業員から書面で申請されたら時間単位の有給に変更可能としました。監督署にOKもらえなければやめようと思っていましたが、大丈夫なようでした。この話は、どこの社労士さんのサイトにも書いていないんです。
有給についてはもう1点。入社したばかりの人は6か月間有給をつけなくてもいいという法律ですが、6か月間休まないって難しいです。有給前借とか、就業規則にないルールで運用をしてはいたのですが、いろいろ面倒なので入社したてから最大10日分の有給を付与することにしました。最大・・というのは、基本は1月に全社員一斉付与にするので、1月までの月数によって付与する日数を決めています。とにかくシンプルな管理ができる規則にしたいと考えました。社労士さんのサイトなどでは、有給の一斉付与での計算が労基法と合わなくならないように注意すべき点、といった細かな話は結構記載されていて参考になりました。
余談なんですが、有給の日数って年功序列ですよね。転職するといきなり不利ですよね。今の時代にそぐわなくなってきていると思いました。
(5)在宅勤務規定の整備
当社には1名だけ遠隔地で在宅で勤務しているメンバーがいます。非常に良好な関係で長いこと勤務していただいているのですが、その実績をもとに規程を整備しました。この件も規則が運用に追いつきました。
(6)副業規程の整備
副業を考えると、働き方改革の考えの中での矛盾点にぶつかります。自由な働き方ができたほうが社会のためになる、という側面と、過重労働にならないようにきっちり管理すべし、という側面です。
週40時間以上の労働は基本NGで36協定があればその範囲で残業する、という考え方からすれば、普通に正社員をやったあとに他所で働くということには無理があります。アフィリエイターとかユーチューバーで稼ぐとか、何か作ってメルカリで売るとかはいいと思います。ぜひやってみるといいと思っています。
そこで、他の会社と労働契約を結ぶことはできるが、所定労働時間内で働くという条件を付けています。役員になることや個人事業を行うことは問題なしとしています。
この「自由か管理か」という問題は深いテーマだと思います。管理が厳しいところにイノベーションは生まれにくいと思います。新しいことを思いついたら、それについて四六時中考えてしまうと思うのですね。月~金の9時~18時に絞って考えるというのは無理だと思います。まぁ、土日も仕事っぽいことしちゃってるかもしれないですね。
私はどちらかといえば自由に働いたほうが楽しいと思ってやってきました。今回、頑張って就労規則を作っていると、代表になったとたん宗旨替え?って言われてしまいそうなんですが、管理する義務と自由な雰囲気の両立ができないものかと悩みながら取り組みました。
(8)服務規律の整備
全社員に読んでもらうことを前提として、冗長な言葉や重複している項目をカットし、整備しました。雇用者もいい加減だから、従業員もいい加減でお互い様、というのではなく、親しき中にも、お互いきちんと自分の責任を果たすというところに立脚した関係を構築していかないといけないです。
というようなわけで、出来上がった就業規則はこれです。
(00)就業規則2019年11月改定.pdf
以下のようなサイトや書籍を参考にしました。
東京労働局。
モデル就業規則やその説明は、本とか買わなくても、厚労省や各労働局のサイトにおいてあります。一通り読んで勉強しました。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/riyousha_mokuteki_menu/mokuteki_naiyou/36kyoutei/shugyoukisoku/tetsuzuki_seido.html
たくさんある就業規則の本を本屋で立ち読みしましたが、わかりやすいということと、ダウンロードできるというのでこの本を購入して参考にしました。著者の方も子育てしながら会社も経営されているようなので、説明は現実的でわかりやすいと思いました。
その他、いろいろな社労士さんのサイトを検索しては参考にしたのですが、コピペっぽいサイトが多いといいますか、語尾がちょっと違うだけで同じ内容のサイトがすごく多いですね。
社労士さんの意見が極端に労働者よりだと経営者は相談したいと思わないでしょうし、極端に経営者よりだと労働基準監督署の人からは良く見られないのかな、、などと思いました。
とがった意見も見てみたいと思ってこんな本も読んでみました。そもそも就業規則ってなんのために作るの?ということを考えさせられました。表紙の絵ほど性悪説的な内容ではないと思います(笑)
代表になって、あらためて人を雇用するというのはどういうことなのか考えなおす必要がありましたので、就業規則を改定するというのはよいプロセスだったと思います。
働き方改革といえば、残業時間を減らすとか有給使うとか、そういうノルマ的な部分が注目されがちです。ですが、本当のところは、人口が減少していくなかで社会を回すために、もっと効率的でなければならないということなのだと思います。効率で一番大切なのはモチベーションだと思いますが、労働条件が悪くてモチベーションが上がらない、というかそもそも就労したいとも思えない、という状況は会社にとって損失ですよね。就業規則の見直しもそういった一連の改革の一部だと思って取り組んでみました。